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Sony Semiconductor Solutions Corporation

車の周囲360度を見守るセンサー群。自動運転時代にもたらす新しい視界とは

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2026.02.27

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末岡洋子
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平郡政宏

明暗差の激しいトンネルの出入口、信号機のLEDが発するチラつき、夜間の歩行者。こうした従来のカメラが苦手とするケースにおいても、いかに正確な情報を捉え続けることができるのか。自動運転車の“眼”となるセンシング技術には、あらゆる環境下でも安心・安全を支えるための認識性能が求められています。

自動運転を語る本企画。第2回は、自動車ジャーナリストの川端由美さんと、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)の車載事業部にて、欧米市場を中心に海外顧客を担当するマシア テオフィル星二郎さん、マー シュエンさんに、自動運転に求められるセンシング技術について語ってもらいました。

自動車ジャーナリストの川端由美さんと、とソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)の担当者による対談を通じ、自動運転の「感覚器」となるセンシング技術の重要性を展望します。
自動運転において、センサーが得る情報の質と量は、AIの判断精度を左右する重要な要素です。SSSは「Safety Cocoon」をコンセプトに掲げ、車の全方位をカバーする車載用センサーを展開しています。車外向けには、明暗差やLEDのチラつきを抑え、夜間でも高精度に認識するCMOSイメージセンサーや、遠方の障がい物をとらえる業界最高水準の感度を持つSPADセンサーを開発。また、車内向けには、居眠りや体調不良を検知するインキャビンセンサーを提供しています。
今後は、カメラの多眼化や複数のセンサーを統合する「センサーフュージョン」によって情報の信頼性を高めつつ、低消費電力との両立をいかに進めるのかが、自動運転技術をさらに進化させるための鍵となります。

Contents

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    自動運転の“眼”となるセンシング技術、AIを育てる役割も

    マシア テオフィル星二郎さん

    ──前回は、地域差はありながらも、着実に進化しつつある自動運転の状況についてお話いただきました。では、自動運転を支えるセンシング技術についても教えてください。

    川端:AIが「頭脳」なら、センシング技術は目や耳にあたる「感覚器」です。人は、感覚が研ぎ澄まされるほど、頭脳に伝わる情報はより豊かになりやすいですよね。自動運転も同様で、センシング技術が進化すれば、AIに学習させる情報の質や量が上がりますから、自動運転システムによる運転の正確さも向上します。つまり、センシング技術は、走行時に信号・標識・歩行者などを認識するための感覚器になっているだけでなく、自動運転を司るAIを育てるという重要な役割も担っているのです。

    ──SSSでは、どのような車載用センシング技術を開発しているのでしょうか。

    マシア:私たちは、「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」というコンセプトを掲げ、車の全方位をコクーン(まゆ)のように包み込み、安心・安全かつ快適な空間を創出することをめざしています。車外と車内の両方を検知するために、大きく3種類の車載用センサーを開発しています。

    1つ目が、車外向けのセンサーの主軸の1つである「CMOSイメージセンサー」です。スマートフォンのカメラなどにも広く応用されている技術で、車載用では、歩行者や自転車、信号機、車線などを瞬時に、かつ高精度に認識する性能を実現しています。

    そのため、一般的なイメージセンサーでも重要な「感度」や「ダイナミックレンジ」に加え、特に車載で重要となる機能の1つである「LEDフリッカー抑制」を備えています。ダイナミックレンジが優れていればいるほど、極端な明暗差がある環境でも対象物を正確にとらえられます。たとえば、トンネルの出入り口や夕日の逆光といったシーンなどですね。また、LEDフリッカー抑制とは、信号機や標識に活用されているLEDをカメラ撮影する際に発生し、誤認識の原因となる「チラつき」を抑えながら高画質を維持する技術です。このダイナミックレンジとLEDフリッカーは、一方を優先すると一方が犠牲になりやすく、その両立にはさまざまな創意工夫が必要ですが、SSSは、独自技術によって高水準で両立を実現しています。

    2つ目が、車外向けセンサーのもう1つの主軸である「車載LiDAR用SPAD ToF方式距離センサー(以下、SPADセンサー)」です。LiDARはレーザー光を活用したセンシング技術で、対象物との正確な距離など、カメラだけではとらえきれないケースにおいて高精度な情報を取得できます。特に、遠方の障がい物検知や、視界の悪い夜間・悪天候下などで高い有効性を発揮します。

    川端:SSSのSPADセンサーは、業界最高水準の検知感度ですよね。

    マシア:はい。通常、遠くまで測ろうとするとレーザー出力を強める必要がありますが、それでは人体への影響や他車のセンサーへのダメージといったリスクが生じかねません。私たちは、レーザー出力を低く抑えながらも正確かつ長距離の測定を実現するという目的のもと、極めて高い感度のセンシング技術を磨き上げてきました。

    マー シュエンさん(右)

    ──もう1つの車載用センサーは、どのようなものでしょうか。

    マシア:車内をカバーする「インキャビンセンサー」です。自動運転が高度化すると、運転手が運転を車に任せて眠ってしまうようなケースが想定されます。インキャビンセンサーが認識対象としているのは、運転手を中心とした車内の状態です。このセンサーを活用すれば、たとえば運転手が眠ってしまった場合を想定して、アラームを鳴らしたり、車両を少し揺らしたり、目を覚まさせる機能を実現しています。

    最新のインキャビンセンサーでは、可視光と近赤外線の両方をとらえることができます。これにより、昼夜を問わず、運転者や同乗者など社内の状況を高精度に認識でき、居眠りや体調不良を検知できます。

    川端:SSSのインキャビンセンサーは、業界最高レベルの感度と最小クラスのサイズを両立していますよね。また、インキャビンセンサーは法規制により搭載が義務化される動きもあり、最近、急速にその必要性が高まっています。

    人の眼を超える性能、車載ならではの要求水準

    川端 由美さん(右)

    ──CMOSイメージセンサーはスマートフォンなどにも活用されていますが、モバイル用との違いや、自動運転だからこそ求められる技術性能についても教えてください。

    マー:SSSでは、低ノイズ・高感度など、モバイル用イメージセンサーで長年培ってきた知見やノウハウを、車載用に最適化して展開しています。ただし、モバイル用に求められるのは、端的に言うと「日常使いできる高品質な写真」を撮影するための機能です。対して、車載用に求められるのは、あらゆる環境下で正確に対象物をとらえ続けられる認識性能と、長期間にわたって動き続けられる安定性です。人の命にかかわる部品ですから、信頼性への要求レベルは比較にならないほど高くなります。

    川端:安定稼働や堅牢性は、車載用ならではの重要要件ですよね。おっしゃる通り、命に関わるデバイスである以上、基本的には「ゼロ・ディフェクト(欠陥ゼロ)」という極めてシビアな基準をめざしているのでしょうか。

    マー:そうですね。というのも、一瞬でも対象物を見失えば、真に安全な自動運転は成立しません。そのため、特に高解像度・高感度・低ノイズの三要素の妥協は許されません。同時に、処理スピードも不可欠です。遠方の車両をいち早くとらえることができれば、システムは、その分早く制動(ブレーキなど)の判断を下せます。この「ほんの少しの余裕」こそが、安全・信頼性の差を生みます。今後、レベル4の自動運転へと移行していく中で、センサーが担う「情報の質とスピード」の重要性は、さらに高まっていくでしょう。

    ──そうした「質とスピード」などをさらに高める手法として、市場で注目されている「多眼化」についても教えてください。

    マシア:カメラを複数台搭載する多眼化は、メインストリーム化しつつあると言えます。2025年現在、車1台あたりのカメラ搭載数は平均3.5個ですが、2030年には6.5個まで増えると予測しています。この台数があれば、レベル3における高度な自動運転が実現するといわれています。

    ただ、カメラが増えると処理工程が増えますから、電力負荷も大きくなります。車1台の電力は限られているため、多眼化において、カメラの消費電力削減は大きな課題です。

    また、カメラに限らず、LiDARなどに搭載されるレーザー光を用いたセンサーなど、車載用センシング技術の幅も広がっています。多様なセンサーをどう使いこなし、いかに統合して情報の信頼性を上げていくのか。その鍵を握るのがセンサーフュージョンです。センサーフュージョンとは、性質の異なる複数のセンサーから得られた情報を統合し、より正確で信頼性の高い情報にする技術です。センサー単体の性能に加えて、複数のセンサーを統合する技術も重要になるということですね。

    ──自動運転を支えるセンシング技術について、理解が深まりました。次回は、自動運転が普及すると、社会や移動体験がどのように変わっていくのかについてお話しいただきます。

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