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ものづくり×農業で食から世界を変える

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2025.07.25

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鷲尾 諒太郎
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平郡 政宏

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)が開発する土壌水分センサーは農業をどのように変えるのか、遠藤康平(えんどう・こうへい)さんと清水和洋(しみず・かずひろ)さんの取り組みを伺った前回。サーキュラーエコノミーの実践者である安居昭博(やすい・あきひろ)さんは、そこに日本の産業の新たな可能性を見出したといいます。

今回は「食」を通じてサーキュラーエコノミーにアプローチすることの意味、そしてテクノロジーを活用した農業の可能性について、お三方に意見を伺います。

食を通じたサーキュラーエコノミーの普及を目指す安居さんと遠藤さんは、誰もが関わる「食」が循環型ビジネスの入り口になると考えています。おいしい食品を提供することで自然に関心を持ってもらい、持続可能な仕組みを伝えられるといいます。清水さんは土壌水分センサーを活用し、AIによる水やりの完全自動化に挑戦。将来的には温度や湿度なども統合し、理想の作物を手間なく育てる技術の確立を目指しています。この技術は海外展開も視野に入れており、特に水資源の乏しい地域での活用などが期待されます。彼らの取り組みは、日本のものづくり技術を生かした新たな農業モデルの可能性を示し、テクノロジーによる持続可能な未来への道を切り開いています。

Contents

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    誰もがクリエイターのように野菜をつくる未来

    ——安居さんと遠藤さんには、「食」という領域で循環型のビジネスを展開していることが共通しています。そのアプローチを選択した理由をお聞かせください。

    安居:「食」は老若男女誰でも関わりが深いですし、サーキュラーエコノミーに関心を持ってもらうにもわかりやすい切り口かなと思っています。

    たとえば、サーキュラーエコノミーの本を読んだりイベントに参加したりする人は限られると思いますが、単純においしい食べものであればたくさんの人に楽しんでいただけると思います。そうして手に取っていただけた方に、デザイン面などを工夫して伝えれば、自然とサーキュラーエコノミーにふれる機会になると思うんです。

    安居昭博さん
    安居昭博さん

    遠藤:同意見ですね。子どもにとっても「食」って身近なものですし、わかりやすいじゃないですか。子どもは正直なので、まずいものは残すんですよ。食の領域において廃棄物を減らすためには、やはりおいしいものをつくることが何よりも重要。そのわかりやすさが、食からサーキュラーエコノミーにアプローチする良さだと思います。

    ——清水さんは、これまで遠藤さんと土壌水分センサーの実証実験を進めてきました。今後、どのようなことにチャレンジしたいとお考えでしょうか。

    清水:これまでの2年間で、できることは徐々に増えてきました。現在チャレンジしているのは、水やりの完全自動化です。土壌水分センサーを用いてさまざまな数値を可視化することができたので、今はそのデータをもとに、水分の供給を制御しているAIに「どのようなタイミングで、どれほど水をやればいいのか」を学ばせ、人の手を介さずに土壌中の水分をコントロールすることに挑んでいます。

    1畝(うね)ごとの水分量をスマホで確認
    1畝(うね)ごとの水分量をスマホで確認

    清水:さらに言えば、地上部、すなわち温度や湿度、光量の管理も自動化していきたいですね。地下部(土壌中)と地上部、双方のデータベースを構築し、AIにインプットさせられれば、農業は大きく変わると思っています。たとえば、ある農家さんが「こんなトマトをつくりたい」と思ったとき、さまざまなデータとテクノロジーを活用して、ほぼ自らの手を動かすことなく理想とするトマトをつくれるようになるかもしれません。

    誰もがクリエイターのように農作物をつくる未来をつくりたいと思っていますし、この実証実験を通して、その入り口が見えてきた気がしています。

    ものづくりの力で世界の農業を変える

    安居:日本はものづくりで栄えてきた国ですよね。ソニーのような会社がものづくりを通して国を成長させてきたし、その成長を支えてきた会社にはさまざまな知見や技術が蓄積されています。今回お話を聞いていて思ったのは、そんなものづくりを通して培ってきた技術やサプライチェーンを生かした、日本ならではのサーキュラーエコノミーの可能性があるのではないかということです。

    たとえば、清水さんと遠藤さんが取り組んできたトマト栽培を、ソフトとハードを組み合わせ、一つのパッケージとして海外に輸出することもできるのではないでしょうか。新しい「日本型農業」として、一つの輸出産業になる可能性を感じたのですが、海外展開などは考えていますか。

    遠藤:僕がやりたいのは、まさにそれです。農家さんではなく一般企業を対象に、仕組みを含めてハウスごと提供していきたいと思っています。国内企業はもちろんのこと、海外にも販売したいと思っていて、すでに複数の海外企業とも商談をしているんですよ。

    清水:海外に出ていくのは自然な流れだと思っています。たとえば、水資源にとぼしい砂漠の国では、土壌水分センサーを活用した農業のニーズはかなり高いはずですし、そういった国でこそ活用してもらいたいですね。このハウスで構築した仕組みが、数年後に海を渡る可能性はとても高いと思っています。

    清水和洋さん
    土壌水分センサーを活用してトマトを栽培する、NDYunitedのハウス

    ——では、最後にこの記事を読んでいる方、特にテクノロジーの未来を担うエンジニアの皆さんに対してメッセージをお願いします。

    遠藤:この記事を読んで少しでもおもしろいと思ったら、ぜひここに遊びに来てもらいたいですね。すべては現場から始まります。「事件は現場で起きてるんだ!」ということですね(笑)。

    安居:今回のようにテクノロジーを応用した新しい価値創造では特に、世界市場も視野に入れられると思います。皆さんのような日本発の取り組みが「世界の最先端」として注目を集める可能性はおおいにあると考えています。

    清水:私は入社以来、テレビの部品を開発する部署に所属しているので、農業に携わるなんて思ってもいませんでした。新しい世界に飛び込むと視野が広がったり、想像もしなかったような出会いがあったり、日々が新鮮な刺激に溢れています。ぜひ、臆せずに未知の世界に飛び込んでもらいたいですね。

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