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微妙な差を感じてしまうからこそ、デバイスに求めるのはアナログな描き味

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2024.01.09

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武者良太
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平郡 政宏

いつか私たちも足を踏み入れるであろう2050年代の近未来を舞台に、高校生によるアニメーション制作と学校生活を描いた、漫画『映像研には手を出すな!』。作中ではテクノロジーが生活の中に溶け込んでいて、未来における技術のあり方を示唆するような描写が印象的です。

『映像研には手を出すな!』作者の大童澄瞳おおわらすみと先生に、イマジネーションの原点と創作活動を支える道具に求めることをお聞きしました。また、クリエイションを支えるキーデバイスを提供するソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)のセンシング技術を体験いただき、人間がよりクリエイティビティを発揮できる未来をスケッチしていただきました。

漫画家の大童澄瞳氏は、作品「映像研には手を出すな!」で2050年代の近未来を描き、技術と日常生活の融合を表現している。彼は、士郎正宗氏の作品との違いを意識し、自動運転の普及やテクノロジーの描写を通じて、2052年の日常を探求している。また、作品制作プロセスではストーリー考案と作画の時間を半々に割り当て、時にセリフが完成するまで描き進めることもあると述べている。大童氏は液晶タブレットを使用し、高い解像度と処理速度を求め、微妙な違いでも作画に影響するため、アナログな描き味に近づけることを重視している。2050年代の生活は現在とあまり変わらないかもしれないが、技術の進歩と日常の融合により微妙な差異が生じている。

Contents

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    未来の生活は、今とそんなに変わっていないかも

    ――まず、『映像研には手を出すな!』の舞台について教えてください。

    大童 なんとなくイメージしてるのは2052年ぐらいです。意識したのは士郎正宗さんの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』との違いですね。あの作品は第三次世界大戦を経験した世界の中で戦争を基準とした技術を描くSFです。作品の舞台である2030年代までにそういうことが起こるのかどうかと考えたとき、もうちょっと地味な未来を描いてみたいな、と思ったんです。

    ――テクノロジーの描かれ方には、どこか懐かしい印象を受けます。意識されているのでしょうか。

    大童 読者の方から「これって、2050年代の話なんだ」と驚かれることもありますね。僕の中では、たとえば自動運転は完全に普及しているから、普通のタクシーの運転手はいないけど、高級料亭みたいなところからおじさんが帰宅するときは運転手がいるハイヤーを使うといった描写をしています。人間が運転するほうが贅沢だという表現です。

    無人タクシーが生活に溶け込んでいる描写(出典:『映像研には手を出すな!』第6巻より ©大童澄瞳/小学館)
    無人タクシーが生活に溶け込んでいる描写(出典:『映像研には手を出すな!』第6巻より ©大童澄瞳/小学館)

    また、スマートフォンの背面カメラについては複眼のようなレンズはなく板状のデバイスでそのまま写真が撮れるという描き方をしていますが、ハイエンドなゲーミングPCはパーツを交換するのが前提となるタワー型のままにしているんですね。

    2023年の現在と比べても、未来の生活ってさほど変わっていないのではないかと思います。建造物なども、木造がコンクリート造となるような技術の大転換や産業革命が起きない限り、数十年たっても変わらないものは変わらないのではないでしょうか。

    大童澄瞳先生

    セリフには最後まで悩むこともある

    ――作品制作のプロセスついても教えてください。『映像研には手を出すな!』は月刊誌で連載されていますが、ストーリーを考える時間と画を描いている時間はそれぞれどれくらいなのでしょうか。

    大童 だいたい半々ですね。15日かけてネームを考えて、残りの15日で作画のペン入れをしていきます。

    まず、1話ごとの展開を決めてから細かいコマ割りを考えますね。たとえばソファーに座って議論しているシーンなどは「ここで、多分、なんか一言返すよな」「それに対して疑問を投げかけて結局悩んじゃうよな」「でもそれを打開する表情を描いておくか」みたいな感じです。実は、ペン入れが終わるまでセリフができてないこともたまにあります。

    ――特徴的なセリフが印象に残っている読者も多いと思うのですが、最後まで空白なこともあるんですね。作画よりもストーリーやセリフを考える時間の比重が大きいのは意外です。

    大童 ストーリー展開から、表情は先に決まるんですけど、セリフは悩むところなんですよね。だからこそ、時間が必要になります。とりあえずもう作画に入んなきゃっていうタイミングでセリフが出てきてない場合は、作画を全部終わらせてから、「このとき、なんて言ってるんだろう」と、今度はセリフだけ考える時間を作りますね。

    1000分の1の差でも違和感が生まれる

    ――創作活動を支えるテクノロジーに対して求める要素を教えてください。大童先生はどのような道具を用いて作画しているのでしょうか。

    大童 液晶タブレットです。かなり大きなモデルを使っています。解像度は4Kなのですが、いずれは8Kの製品が発売されてほしいと思っています。

    作画自体は600dpiの解像度で、B5やB4サイズの原稿を描くのですが、通常の原稿用紙ぐらいのサイズに引き伸ばしたときに、フルHDだとやっぱりドットが潰れてしまうんですね。そして電子書籍よりも紙の解像度が高いので、4Kは最低限必要だなと考えています。

    大童澄瞳先生

    ――ほかに、重視されているポイントなどはありますか。

    大童 処理速度ですね。カタログスペックはあまり信用しないタイプなのですが、実際にハイエンドな液晶タブレットで線を引いてみると応答速度が全然違ったんです。引っかかりを感じるというか、1000分の1とかの差でも全然わかっちゃう。そんな微妙な速度の違いなんて人間にはわからんやろと思ってたんですけどね。だからこそ、なるべくアナログでの描き味に近づけたいと考えています。

    02 デジタルの眼でとらえる見えない光。大童澄瞳おおわらすみとがSSSの技術と出合ったら
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