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心に響く一瞬を追い求める、フォトグラファーの信念を支えるカメラ

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2026.03.30

Text
末岡洋子
Photo
平郡政宏

アスリートの剥き出しの表情、勝利の歓喜、敗北の悔しさ。二度と再現できない決定的瞬間を切り取るスポーツ写真は、見る者の心を激しく揺さぶります。その感動の裏側には、フォトグラファーの卓越した技術と、それを支える機材の絶え間ない進化があります。

デジタル化、ミラーレス化、そしてAIの台頭。カメラをとりまく環境が大きく変わっていく中で、スポーツ写真の本質はどう守られ、どう進化していくのでしょうか。30年以上にわたりスポーツ写真の最前線を走り続けるスポーツフォトグラファー・水谷たかひとさんに、技術革新がもたらす表現の可能性と、時代が変わっても揺るがない「一瞬」を写し出すことへのこだわりを伺いました。

30年以上のキャリアを持つスポーツフォトグラファーの水谷たかひとさんは、スポーツ写真の本質は、選手の歓喜や悔しさ、その場の空気感までも表現された「心に響く瞬間」を切り取ることにあると語ります。
再現不可能なそうした瞬間をより確実にとらえる上で、カメラの進化は大きな力となりました。特に、ソニーの『α1』の登場は、高解像度と歪みのない連写を両立させ、表現の幅を劇的に広げました。機材への深い信頼がフォトグラファーのフットワークを軽くし、かつては困難だった表現をも可能にしています。
また、AIによる後処理技術が発展する現代においても、水谷さんは現場で真実を写し出すことにこだわり続けます。それは、究極の機材を託した技術者の思いに応えるプロとしての覚悟であり、見る者の心を揺さぶる写真の本質を守るための信念でもあるのです。

Contents

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    スポーツ写真ならではの難しさと、テクノロジーがもたらす変化

    水谷 たかひとさん

    ──スポーツフォトグラファーとして30年以上ご活躍されている水谷さんが考える、スポーツ写真ならではの難しさについて教えてください。

    水谷:スポーツ写真の一番の特徴は、やはり被写体のスピード感と、撮り直しが一切きかないことですね。二度と再現されないその一瞬を迷いなく切り取らないといけません。また、スポーツ写真には報道としての役割もありますから、「いかに真実を写すのか」も大事な視点です。ただ、その「ありのままの真実」をたった1枚の写真に収めるのが、実は一番難しかったりするんです。

    ──その瞬間に込められた選手の感情や、その場の空気感までを、なんら作為のない写真として収めるということですね。だからこそ、スポーツ写真は私たちの心を強く揺さぶるのでしょう。

    水谷:皆さんが、新聞や雑誌、ネットなどで目にするスポーツ写真には、勝者の歓喜だけでなく、敗者の悔しさも写し出されています。僕たちスポーツフォトグラファーが何より大切にしているのは、そんな「心に響く」一瞬を決して逃さずに切り取ること。テニスのサービスエースやサッカーのゴールが決まった瞬間など、ワクワクするような躍動感はもちろんですが、ゴールを決められた側の選手の姿も、人の心に深く刺さったりしますよね。

    ──そうした一瞬を切り取るために、カメラの進歩はどのようなインパクトをもたらしてきたのでしょうか。スポーツフォトグラファーのお立場から教えてください。

    水谷:僕自身のキャリアを振り返ってみても、フィルムからデジタルへ、そしてミラーレスへと変化を遂げてきました。センサー性能や画像処理技術など、カメラの進化には目を見張るものがありますよね。

    特に、今主流のミラーレスは、その進化を象徴していると言えるでしょう。ミラーレス構造によってカメラ本体の小型・軽量化が進み、さらに強力な手ブレ補正機能も備わったことは、僕たちにとって大きなアドバンテージになりました。撮影時のフットワークが格段に軽くなり、これまで以上に自由なアングルや環境に踏み込めるようになり、表現の幅が確実に広がりましたから。

    僕らは常に、「これまで撮れなかった瞬間・質感・空気感まで表現したい」と願いながらシャッターを切っています。その理想を叶えるには、心から信頼を置ける機材の存在が欠かせません。その点、2021年にソニー株式会社から発売された『α1』は本当に画期的なカメラでした。有効約5010万画素という高解像度でありながら、ブラックアウトフリー撮影(※1)が可能で、ローリングシャッター現象(※2)も大幅に抑えられている。このカメラを手にしてからは、アスリートの表情や動きといった「心に響く一瞬」を、これまで以上に確実にとらえられるようになったと実感しています。

    ※1 静止画撮影時にファインダー像が途切れず、被写体を連続して見ながら撮影できる機能
    ※2 一般的なデジタルカメラで採用されているローリングシャッター方式イメージセンサーの特性により、動きの速い被写体を撮影したときに、被写体が斜めに歪んで写ってしまう現象(「動体歪み」とも言う)

    スポーツ写真の本質とは? AI時代にフォトグラファーが貫くべき覚悟

    ──カメラの進化によって、かつては難しかった撮影もできるようになったのですね。最近はAIによる画像補正といった後処理の技術も発展していますが、どのように感じていますか。

    水谷:最近のカメラは本当に高機能で、カメラ内でノイズを抑えながら解像度を高めるといった画像処理など、便利な技術が数多く備わっていますよね。ただ一方で、僕は「撮影した後で画像を補正すればいい」という考え方はしていません。

    表彰台に立つ選手の写真を見て、「将来はプロになりたい」と目を輝かせる子どもがいたり、選手の汗を見て「自分も頑張ろう」と勇気をもらう人がいたり。ありのままの真実を切り取った写真には、それだけ大きな力が宿ると信じています。だからこそ、目の前にある「真実の一瞬」を追い求めて現場で勝負することが、僕の揺るがない信条です。

    それに、もし僕らプロフォトグラファーが、「撮影した後でなんとかすればいいや」と考えるようになってしまったら、「最高のカメラをつくろう」と挑戦し続けている技術者の方々の思いを断ち切ってしまうことにもなりかねません。

    僕らは、カメラメーカーの皆さんから、「最高の一瞬を切り取れる可能性がある究極のカメラ」を託されている。その思いが詰まったカメラを現場で徹底的に使いこなし、誰かの心を激しく揺さぶる1枚を撮り切れた瞬間こそ、初めてフォトグラファーと技術者、双方の思いが共鳴し、技術革新が本当の意味で完成したと言えるんじゃないでしょうか。

    ──次回は、水谷さんが驚いたという、カメラのさらなる進化について伺います

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