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なぜ、東北大学にヒト・モノ・企業が集うのか? 半導体共創が描く価値

2026.09.18

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相澤良晃
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平郡政宏

自動運転やAIの普及など、半導体をとりまく技術革新はかつてないほど加速しています。この激変するテクノロジーの最前線で価値を創造し続けるために、どのような視点で学び、知見をアップデートしていくべきなのでしょうか。

そんな創造と学びを体現しているのが、半導体研究において世界有数の実績を誇る東北大学です。「東北大学半導体テクノロジー共創体」や「共創研究所」といった産学連携の取り組みにより、研究室の「知」を社会実装へとつなげるとともに、その過程を通して次世代を担う半導体人材を育んでいます。

半導体分野における産学連携が、技術創出と人材育成にどのようなインパクトをもたらすのか。東北大学 理事(産学連携担当)の遠山毅(とおやま・つよし)さんと、東北大学の半導体研究の主要拠点でもあるマイクロシステム融合研究開発センター 教授/センター長の戸津健太郎(とつ・けんたろう)さんにお話を伺いました。

半導体の技術革新が求められる中、東北大学は、産学連携を通じて研究成果の社会実装と次世代人材の育成を推進しています。同大学の強みは、150人超の半導体研究者と国内最大規模のクリーンルームを擁する世界トップレベルの研究インフラ。2021年に設立した「東北大学半導体テクノロジー共創体」などの取り組みを軸に、企業との共創を加速させています。

同大理事の遠山さんは、「技術進歩の速さや開発コストの増大が、産学連携を後押ししている」と分析。同じく同大教授の戸津さんは、「社会ニーズにふれる研究環境が学生のモチベーション向上につながる」と言います。2人はさらに、「研究第一・門戸解放・実学尊重」という建学の精神のもと、社会実装と人材育成の両輪を回し続けることが東北大学の使命だと語ります。

Contents

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    実社会のニーズにふれる経験が、学生のモチベーションを上げる

    東北大学 理事(産学連携担当) 遠山毅さん
    東北大学 理事(産学連携担当) 遠山毅さん

    ――昨今、東北大学を始め、東京大学や熊本大学など多くの大学で、企業と連携しながら半導体の研究・開発を進める動きが加速しています。なぜ、社会と大学の共創が求められているのでしょうか。

    遠山:国の支援政策や各大学の経営戦略などいくつかの要因がありますが、「技術進歩の速さ」が大きいように思います。半導体は世代交代が早く、材料やデバイス構造の新提案が数年で実用化されることも珍しくありません。企業としては、競争に遅れないように開発スピードを速めていかなければいけないのですが、一社単独ではやはり限界がある。そこで「大学の力を借りよう」となるわけです。

    そもそも半導体関連の研究開発には、クリーンルームや試作ラインなどのインフラが必須で、それらを企業単独で整備・維持するには大きなコストがかかります。その点、大学の中には、一気通貫で半導体を試作できる最新設備や研究環境が整っているところも多い。これらを活用しながら基礎研究から製品化まで一緒に取り組んでいくことができるのも、産学連携の動きが加速している要因の一つでしょう。

    マイクロシステム融合研究開発センター 教授/センター長 戸津健太郎さん
    マイクロシステム融合研究開発センター 教授/センター長 戸津健太郎さん

    戸津:一方の大学にとっても、基礎研究から社会実装まで企業と伴走できる意義は大きいと言えます。多くの企業は、「目下、こんな製品が求められているので一緒に開発したい」と明確な要望をもって相談に来られる。そうした社会のニーズに則した研究開発ができるという環境が、学生に与える刺激は計り知れないですよね。自分たちの研究が社会の役に立つことが実感できて、モチベーションアップにもつながります。

    私自身、東北大学工学部の出身で、学生時代に企業の研究員の方と一緒に研究開発に取り組んだことが大きな刺激になりました。さまざまな企業の研究者と話ができ、各社の技術開発にじかにふれることができる。そのような経験は、共創を推進する大学ならではの魅力であり、学生にとっての大きな財産になると思います。

    研究者150人超、クリーンルーム国内最大規模。東北大学が仕かける半導体“共創”

    ――産学連携の機運が高まる中、東北大学は2021年に「東北大学半導体テクノロジー共創体」を立ち上げました。その狙いについて教えてください。

    遠山:まず一口に半導体といっても、その専門性は、材料や素子の研究から、それらを形にする製造装置やプロセス技術、システムとして機能させる集積回路、さらには品質や性能を保証する評価・分析まで、多岐にわたります。東北大学には、そうした各分野の半導体の研究者が150人以上集結しており、この数は単一の教育機関として世界トップレベルです。

    その半導体研究者たちが、部局や研究室の垣根を越えて大学全体で連携し、企業を始めとする学外の多様な研究者とともに新たな価値を生み出していく。そのための共創を進めるプラットフォームとして誕生したのが東北大学半導体テクノロジー共創体です。

    大型クリーンルームを活用した半導体研究開発(写真提供:東北大学)
    大型クリーンルームを活用した半導体研究開発(写真提供:東北大学)

    ――日本の半導体産業を強化、底上げしていくプラットフォームとも言えますね。そうした活動を支える東北大学の研究拠点や設備には、どのようなものがあるのでしょうか。

    遠山:たとえば、次世代の省電力半導体であるスピントロニクス半導体の研究開発を進める「スピントロニクス省電力ロジック半導体開発拠点」や、現代の自動車に必須の慣性センサーや通信デバイスの研究開発、技術評価などを行う「MEMS設計・プロセス開発実証拠点」といった先端技術分野の研究拠点を設けています。

    これらの各拠点・施設に設けられたクリーンルームの総面積は8,500㎡におよび、単一の教育機関としては国内最大規模です。やはり、半導体の研究開発には多種多様の装置・機器が必要で、クリーンルームはそうした設備を揃えるための土台となります。「8,500㎡」という数字は、東北大学の半導体研究設備の充実具合を知っていただくための、象徴的な数字だと自負しています。

    イエロールームにおける半導体微細パターン形成(写真提供:東北大学)
    イエロールームで行われる半導体微細パターン形成(写真提供:東北大学)

    ――各技術分野におけるスペシャリストの知見と、最先端の研究設備。外部に向け、ソフトとハードの両面から門戸を開いているわけですね。

    戸津:おっしゃる通りです。たとえば、私がセンター長を務めている「マイクロシステム融合研究センター」は、「ミスター半導体・光通信の父」として知られる工学博士で、元東北大学総長の西澤潤一先生が名誉所長を務めていた半導体研究所を大学に移管してできた組織がベースとなっています。さまざまな企業と連携して、次世代の半導体やセンサーなどの研究・開発を行っています。昨年は150社ほどの企業と連携し、その成果を製品化などにつなげてきました。

    研究者150人超、クリーンルーム国内最大規模。東北大学が仕かける半導体“共創”

    遠山:そもそも東北大学には、「研究第一」「門戸解放」「実学尊重」という3つの建学の精神があり、創立以来、一貫して「広く有為な人材に学びの機会を提供し、研究成果を社会に還元すること」を使命としてきました。

    この建学の精神は、産学連携の根幹にも息づいています。企業との連携を通じて、本学が長年にわたり蓄積してきた半導体分野における知見はもちろん、その研究成果を社会実装していく。その過程を通して次世代の半導体人材を育成していく。この社会実装と人材育成の両輪を回し続けていくことこそが、私たちの重要なミッションだと考えています。

    ――次回は、共創と人材育成について、具体的な取り組みや成果を伺います。

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