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ゆる楽器ハッカソンでクリエイティブの土壌を育み社会に開く

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2024.04.22

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武者 良太
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平郡 政宏

技術は人のクリエイティビティをどのようにサポートできるのでしょうか。そんなヒントを探るべく、世界ゆるスポーツ協会 代表理事の澤田智洋(さわだ・ともひろ)さん、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の梶 望(かじ・のぞむ)さん、ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)の早川 知伸(はやかわ・とものぶ)さんの3名を迎え、世界ゆるミュージック協会プロジェクトに迫る特集の第3回。
今後の展望を伺っていくなかで、3名の対話は、多様性の尊重をめざすDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の実践やクリエイターとエンジニアのあり方へと広がっていきました。

ゆる楽器ハッカソンは、クリエイティブな土壌を育み、社会を開いていく取り組みである。2021年に開催されたハッカソンでは、エンジニア以外の参加者も多く、女性の参加も目立った。ゆる楽器の開発には、新しい音楽や楽器のイベントを通じて、クリエイティブなアイデアが生まれ、それがSPRESENSE™を活用して具現化されている。将来的には、音作りやセンサー技術の向上など、ソフトウェア面やハードウェア面での改善が期待される。また、DE&Iの観点からも、さらなる多様性を受け入れる姿勢が必要であり、柔軟な発想とチームワークが重要であるとの意見が述べられた。

Contents

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    クリエイターが集い楽器制作の地平を開いたゆる楽器ハッカソン

    澤田 活動を振り返ってみると、2021年に開催したゆる楽器ハッカソンは面白かったですね。ゆるミュージックの新たな地平を開いた感じがしたし、エンジニアじゃない参加者が多かった。

    ソニーグループのYouTube公式チャンネルより。東京で行われた「ゆる楽器ハッカソン」の様子が紹介されている

     ハッカソンというと、プログラミングをしたり、はんだごてを握りしめて回路をつくったりといったスキルをもつ技術系の方が多く参加するという印象がありますよね。

    早川 ゆるミュージックのハッカソンは、音楽をやっている方とか、デザインをやっている方が多く参加してくださる。

     他のハッカソンと比較して、女性の参加者が多いのも特徴ですよね。昨年の大阪でのハッカソンは女性の割合が参加者の半数程度で、これは珍しい気がします。それだけ敷居を下げられているということでしょうか。

    早川 驚いたのが、みなさんセンサーのことは知らなくてもやりたいことのイメージはしっかりと頭に思い浮かんでいるんです。だから「傾けたときに音が鳴ってほしい」といった要望に「加速度センサーを使えば実現できる」と具体的なアドバイスできる。この体験をつなげていくことで、エンジニアでなくても新しい楽器を開発できる土壌ができていくのではと感じています。だからこそ、技術のことをあまり考えずに使えるツールが重要ですよね。

    早川 知伸さん
    早川 知伸さん

    技術者こそ現場目線を大切に、変化を恐れず柔らかい発想を

     今後、開発ツールとしてのSPRESENSE™やゆるコアをアップデートしていきたいですよね。

    早川 そうですね。私たちは楽器メーカーとは違うので音作りのところはまだ全然甘いと思っているんです。だからクリエイターが思い描く音はまだ作れてない。これから、シンセサイザー機能を充実させるなど、ソフトウェア的に解決できる部分を実装していきたいですね。ゆる楽器の中には人間の動きを数値化しているものもあり、もっと高精度なセンサーをゆる楽器の開発に使えるようにする必要があるかもしれません。

     試行錯誤しなきゃいけないことだらけですよね。プロジェクトのなかで感じた反省点のひとつとして、「電子音が攻撃的に感じて怖い」と言われたことがありました。ある介護施設でゆる楽器の音楽イベントをやったときのことです。

    僕らとしては他の音に隠れないように目立つ音、大きな音にして主張させなくちゃならないと思っていたけど、立場によって音の作り方、場の作り方、空気の作り方は違うんだと。もう日々勉強ですね。僕らは楽器のエキスパートじゃないですけど、勉強しながらみんなに楽器演奏の楽しさを伝えることを続けていきたいですね。

    澤田 それを聞いて頭に浮かんだことがあります。最近DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関していろんな企業から相談を受けているのですが、誤解をおそれずに言うと、本来これって永遠に実現しないかもしれないんですよ。有名な話でいうと視覚障がい者誘導用の点字ブロックは、車椅子ユーザーとってはわずらわしいことがあります。つまり、点字ブロックって万人にとっての最適解ではない。だからDE&Iは永遠にブラッシュアップしていく必要があるんです。ゆるミュージックのいいところは、永遠にブラッシュアップしていくためのフィードバックが速くて強いことだと思っています。

    早川 たしかにそうですね。ゆる楽器に使われているSPRESENSE™は、産業用途に耐えうるほど高性能なぶん安価とは言えないものの、一般販売もしていて自分で新しいものを作るためのベースであってほしいと思っています。はじめにクリエイティビティを刺激する存在であり、新しいチャンスを生む行動のスタート地点になることができるんじゃないかって期待しているんです。楽器をつくってみたいと思った方は、どんどん使ってみてほしいですね。

    澤田 エンジニアでなくても電子楽器の開発ができるゆるコアは、まさに使う人に寄り添った柔らかい発想からきたものだと思いますね。

    早川 これまでいろいろな現場を見てきて感じたことですが、どういう技術が現場の課題を解決できるかを意識するのも大事ですよね。たとえば、指1本で簡単に操作したいならタッチセンサーやモーションセンサー、眼に関係するものならイメージセンサーといったように、課題を解決する過程で我々の最先端のセンシング技術をうまくリーチさせていきたいなと思っています。さらに言えば、ただデータを取るだけではなく、そのデータの内容や性質をもっと理解したうえでセンシングしていくことが、重要になってくるのかと考えています。

    澤田 エンジニアなど、技術寄りの方のなかには、一点集中で物事を追求する傾向を持たれている方も多いと感じています。

    そういった強みのある方が、梶さんのような社会側を常に見ている人と組むことで、ゆるミュージックのように可能性が広がることもあります。特に現代は、テクノロジーだけでなく人間の価値観も含めてあらゆることがすごい勢いで変化していっているので、「柔らかいチーム」のメンバーでいられるかどうかを意識するといいかもしれません。

    (写真左から)梶 望さん、澤田智洋さん、早川 知伸さん
    (写真左から)梶 望さん、澤田智洋さん、早川 知伸さん

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