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今、半導体産業で求められるのは、他とは違う「尖り」を持った人材

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2025.06.13

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鷲尾 諒太郎
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池村 隆司
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田中 英樹

半導体の入門編として「今さら聞けない基本」をお伝えしていく本シリーズ。最終回の今回は、これから半導体産業で働くことの魅力や、そこで得られるキャリアなど未来に目を向けたお話を伺います。

一見すると難度が高く、たとえば理系の素養がなければ活躍することも難しそうと思われがちな半導体産業。ただ、『新・半導体産業のすべて AIを支える先端企業から日本メーカーの展望まで』の著者であり、半導体産業の趨勢を見つめ続けてきた菊地正典さんいわく、決してそうとは限らないとのこと。半導体業界のこれからには、一体どのような人材が必要とされ、活躍していくのでしょうか。

『新・半導体産業のすべて  AIを支える先端企業から日本メーカーの展望まで』(ダイヤモンド社)著者、菊地正典さんにお伺いする、「入門書を読むための超・入門知識」。菊地さんによると、半導体産業は「ムーアの法則」に象徴されるように、技術革新のスピードが非常に速く、“秒進分歩”で変化を続けている。生成AIの台頭などで高性能な半導体への需要も高まり、新興企業の活躍も期待される。こうした変化に富む半導体業界の未来を切り開く鍵は、人材の獲得と育成にある。「なぜ」を問い続け、“尖り”がある人材であれば、文系も理系も関係なく活躍できるのではないかと菊地さんは推察する。

Contents

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    “秒進分歩”で変わり続けるダイナミックな産業

    菊地正典さん

    ——半導体産業の技術革新は非常に早く、業界のエコシステムが複雑化する傾向にありますね。


    菊地 1965年、インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアは、18〜24ヵ月に2倍のペースで半導体の高集積化(同じ面積の基板により多くの半導体を配置できるようにし、高性能化を図ること)が進んでいくという予想を発表しました。単純化して言えば「半導体の性能は、次の約2年で2倍向上し、その次の2年でさらに2倍向上する」ということですね。これを「ムーアの法則」と言い、この法則は60年経った現在でも有効です。

    『新・半導体産業のすべて』(菊地 正典 著/ダイヤモンド社 刊)よりデータを引用し、編集部にて作成

    「18〜24ヵ月に2倍」の高集積化が進む、あるいはこのペースを指標にする考え方を「モア・ムーア」と言います。最近では「モアザン・ムーア」という言葉も登場し、これはムーアの法則が限界に達したあとも、半導体産業として「何をすべきか」「何ができるか」を考えるスタンスのことを指します。

    この考えの中心になっているのは、半導体の「複合化」です。つまり、1枚の基板上にさまざまな化合物半導体やそのほかの異種材料を複合化することで、新たな機能を実現し、さらに高性能な半導体デバイスチップを開発するという動きが加速しています。

    生成AI需要などの影響もあり、さらに高速かつ効率的に演算処理を行なうことに特化した半導体のニーズも高まり続けていますし、「第2のNVIDIA」になるような新興のファブレス企業も、こういった新しい分野から次々に生まれてくるのではないでしょうか。

    ——進化のスピードこそが、半導体産業の魅力とも言えますね。

    菊地 絶えず進んでいくことを「日進月歩」といいますが、半導体産業はそれどころではなく“秒進分歩“ともいえるスピードで変わり続けています。

    比喩ではなく、今日までの常識が次の日にはそうではなくなっている。朝、新聞を見たらある会社が新たな技術を開発したことを知り、その技術によって短期間で産業全体が大きく変わるといったことも珍しくありません。

    日々新しい技術や知見が生み出される環境はとても刺激的ですし、“秒進分歩“で変わっていくということは、未来がまったく予測できないということでもあります。つまり、どの企業が次に覇権を握るかは誰にもわからない。このダイナミックさも大きな魅力ですね。

    『新・半導体産業のすべて』(菊地 正典 著/ダイヤモンド社 刊)よりデータを引用し、編集部にて作成

    これからの半導体産業で求められる「なぜ」を問う力

    ——覇者がどんどん入れ替わる半導体産業で生き残り続けるために、重要なことはなんでしょうか。

    菊地 やはり人材の獲得と育成に尽きると思います。前回お話したように、一口に半導体産業といっても、各企業が展開する事業は実にさまざまです。多種多様な職種が存在するので、どのような専門性でも生かせるフィールドがあり、今特定の専門性がない方でも、経験を積みながら成長できる環境があります。

    ——理系人材しか活躍できないようなイメージもありますが、実際はいかがでしょう。

    菊地 決してそんなことはありません。これまでお話した通り、半導体産業はその構造が複雑であり、非常に裾野が広いわけです。当然、研究開発など理系の職種以外にも、企画や営業、マーケティングなど文系の方が多く活躍する職種が多種多様に存在しています。

    また、先ほど半導体産業は“秒進分歩”で変わり続けるというお話をしましたが、そのような環境だからこそ、従来の「当たり前」を疑い、新たな「当たり前」をつくり上げようとするスタンスこそが重要であると考えています。たとえば、平均点をたくさん取れるという人よりも、ほかはダメでも特定の分野において抜きん出た能力を持つ。そんな“尖り”のある人材こそ、半導体産業で活躍できる可能性が高いと思います。

    これまでのやり方を踏襲するのではなく、自らの“尖り”を生かし、それまで誰も思いつかなかったようなプロダクトを発想することも大切ですし、生産方法の革新も大切です。変化が激しく、絶えない業界だからこそ、そういった人材が求められているはずです。

    日本の半導体産業が、再び世界の舞台で輝くために

    ——企業側が採用に臨むスタンスも重要になりそうです。

    菊地 そうですね。従来のやり方に縛られていてはいけないように思います。採用のみならず、育成に関してもそう。極めてグローバルな産業であり、生産しているプロダクトの幅もプレーヤーの業種の幅も広大ですから、産業全体を俯瞰し、多角的にものごとを判断できるような視野の成長を、企業側が支援していく必要もあります。

    さまざまな知識やノウハウを融合させ、イノベーションを引き起こすためにも、業界における人材の流動性を高めていくことも重要でしょう。別企業への出向の機会を用意するなどの機運も高まりつつあるように思います。

    “秒進分歩”で変化し続けるグローバル産業の中で、日本企業が再びプレゼンスを発揮するための鍵は、人材の獲得とその育成環境にこそあります。働き手目線で言えば、こんなにも広く、進化の速い産業はほかにないと思うので、勇気を持って飛び込み、刺激的な体験を重ねたい方にこそ、次代を担ってほしいと感じます。

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