Contents
欠点そのものを断つ、開発者の情熱とモノづくりの未来
03
2026.03.30
- Text
- :末岡洋子
- Photo
- :平郡政宏

スポーツの現場で活躍するプロフォトグラファーの水谷たかひとさんと、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)でイメージセンサーの開発に携わる貝沼世樹さんが、カメラの進化について語る今回の特集。最終回は、イメージセンサーの技術革新をリードしてきた貝沼さんが、「世界を変えたい」という技術者としての思い、そして未来への展望について語りました。
グローバルシャッター方式のフルサイズイメージセンサーを搭載した、世界で初めてのミラーレス一眼カメラ『α9 III』。その誕生の裏には、世界初という共通の目標へ突き進んだ組織を超えた強い連携があったと、ソニーセミコンダクタソリューションズの貝沼世樹さんは語ります。スポーツフォトグラファーの水谷たかひとさんは、多くの技術的制約を乗り越え、最適なバランスを導き出すモノづくりの厳しさと醍醐味に共感を示します。
さらに、挑戦できる企業文化の中、今後も技術のさらなる普及と進化をめざす貝沼さんの「世界を変えたい」という信念に対し、水谷さんは、人の感性に響くソニーらしいモノづくりへの期待を寄せます。そんな開発者の情熱が詰まった技術革新は、これからも表現者の可能性を広げ、世界を変え続けていくはずです。
モノづくりの厳しさと楽しさ。チーム全体で実現した革新

──革新的な技術を、プロフォトグラファーにとって利便性が高い機材に変える。その背景には、多くの人との連携や挑戦があったのでしょうか。
貝沼:そうですね。私たちSSSがどれほど革新的なイメージセンサーを開発しても、カメラを製品として完成させるためには、ソニー株式会社(以下、ソニー)との連携が不可欠です。どのモデルも両社一体となって開発を進めていますが、特に『α9 III』に関しては「世界初を成し遂げるぞ!」という共通の目標に向かって、全員が一丸となって突き進みました。
水谷:私たちプロのフォトグラファーは、一瞬を逃さない速さや作品としての画質など、あらゆることを妥協したくありません。こうした「もっと高速に」「もっと高画質に」といった現場の要求・理想を一つの筐体で実現するためには、貝沼さんが手がけるイメージセンサーをはじめ、一つひとつ技術を研ぎ澄まし高次元でまとめ上げる必要があるでしょう。「世界初」という言葉の裏で重ねてきたそんな挑戦こそが、モノづくりの厳しさでもあり、同時に大きな面白さでもあると思います。私たちは、そのように突き詰められてきた機材があるからこそ、過酷な現場でも迷わずシャッターを切ることができるんです。

貝沼:長年、プロのフォトグラファーとして現場に立ち続けていらっしゃる水谷さんにそう言っていただけると、非常に心強いです。おっしゃるように、カメラは、光学・電子・ソフトウェアなどさまざまな要素が緻密に絡み合う、まさに「技術の結晶」です。それら各要素の最適なバランスを導き出すために、多くの調整とエネルギーを要します。それでも、今回は「世界初のグローバルシャッター方式を実現する」という極めて明確なコンセプトがありましたから、迷いなく走り抜けることができました。
世界を変え続けたい、技術者の夢と展望

──貝沼さんは、開発者としてどのような思いを持って取り組まれているのでしょうか。
貝沼:私は、中学生の頃からずっと「世界を変えたい」いう思いを抱いてきました。その思いを実現するために選んだ場所が、ソニーグループでした。半導体分野でキャリアを重ね、『α9 III』を世に出したことで、世界を変えられたと思います。でも、一度で終わりではなく、これからも新たなチャレンジを続けたいです。
ソニーグループでは、誰かがキャリアの道筋を描いてくれるわけではありません。「自分のキャリアは自分でつくる」という文化があります。挑戦できる環境があり、その結果、たとえ失敗してしまったとしても受け入れられる風土があります。リスクを恐れずに次のステップに没頭できることが、開発者としてとても大きなやりがいになっています。
水谷:本当にすばらしい環境ですね。『α9 III』のような革新的なプロダクトは、リスクを取らなければ絶対に生まれないと思います。リスクを背負って挑戦するからこそ、世界初の技術が生まれ、世界を変えることができるのでしょう。そこに至るまでの道のりは平坦ではないが、そうして開発された技術が世に出て、人びとの表現を豊かにしていく。そこには、モノづくりに携わるすべての人の夢が詰まっていると思います。
──開発者のそんな情熱が、イメージセンサーをさらなる高みへ押し上げていくのですね。水谷さんは、これからのクリエイター活動において、カメラの進化に何を期待されますか。
水谷:ソニーはカメラ業界では後発でありながら、常に僕たちを驚かせて、今やトップランナーとして業界を牽引しています。これからもイメージセンサーのさらなる進化に、おおいに期待しています。ただ、カメラは人が使うもの。数値上のスペックを超えて、使う人の感性に響き、揺さぶるような、そんなソニーらしいモノづくりをこれからも続けてほしいですね。
この記事にリアクションする






